と会った丸天井の部屋
と、石像の前の空間が歪んで、黒いローブに身を包み、フードで顔を隠した骸骨のように痩《や》せた姿が、アザシュ像とスパーホークのあいだにいきなり出現した。フードの陰の緑の輝きが次第に明るさを増していく。
「顔を見てはいけません!」セフレーニアが全員に警告した。「スパーホーク、左手で槍の柄をたどって、刃の部分を握りなさい」
スパーホークはぼんやりとその指示を理解し、左手で槍の穂先をつかんだ。とたんにすさまじい力がふくれ上がるのを感じた。
シーカーは絶叫し、スパーホークの前から後退した。緑の輝きが明滅して、消えはじめる。スパーホークは断固とした足取りで、槍の刃をナイフのように突き出したまま、フードをかぶった怪物に一歩一歩近づいていった。シーカーはもう一声絶叫すると、その場から消え去った。
「神像を壊すのです」セフレーニアの声が飛ぶ。
スパーホークは槍を構えたまま、片手を伸ばして壁の窪みから神像を取り上げた。見かけによらず重くて、触れると熱く感じた。それを頭の上まで持ち上げて、思いき二手Toyotaり床に叩きつける。像は無数の破片に砕け散った。
「よくやりました! 妹御はもう無力です、ガセック伯爵。神像を壊したことで、与えられていた異界の力はすべて失われたはずです。姿のほうも、もうカレロスのスティリクムの家に入る前の、元の容姿に戻っていると思います」
「あなたにはいくら感謝しても足りないくらいです」伯爵は心から礼を述べた。
「あれはわたしたちを追ってきてたやつなんですか」とクリク。
「実体ではありません。神像が危ないと見て、アザシュがこの場に召喚したのです」
「実体じゃないなら、別に危険はなかったのでは」
「それは大きな過ちですよ、クリク。アザシュに召喚された幻影は、ときとして実体そのものよりも危険なのです」教母は顔をしかめて、あたりを見まわした。「この部屋にいると胸が悪くなります。早く出ましょう。とりあえず、ドアはもう一度封鎖しておいてください。あとで本格的にふさいでしまうことにして」
「かならずそうします」伯爵は約束した。
一行は狭い階段を引き返し、はじめて伯爵に戻った。ほかの者たちもみんなそこに集まっていた。
「あのものすごい悲鳴、何だったの」タレンの顔はまっ青だった。
「妹だ」ガセック伯爵が悲しげに答える。
カルテンは心配そうにベヴィエを見やった。
「あいつの前でその話をしても、だいじょうぶなのか」と小声でスパーホークに尋ねる。
「もうだいじょうぶだ。それにレディ?ベリナも力を失ったはずだ」
「そいつはよかった。あの女が同じ屋根の下にいるかと思うと、よく眠れなくて」カルテンはセフレーニアのほうを向いた。「いったいどうやったんです。つまり、ベヴィエを治した方法ですけど」
「あの女性が他人に影響を与えている方法を割り出したのです。そこでそうした力に一時的に対抗する呪文を使いました。それから地下室に行って、治療を完成させたのです」教母は眉をひそめた。「とはいえ、まだ問題はあります」と伯爵に向かって、「あの吟遊詩人はまだ野放しのままです。あの人は感染していますし、伯爵が城から追い出した召使たちも同様でしょう。そこから汚染が広がって、大勢の人たちがここに押しかけてくる危険があります。いつまでもここに残って、そういう人たちを一人ひとり治療しているわけにもいきません。この探求の旅は、そのような遅れを許さないほど重要なものなのです」
「武装した者たちを雇おう。その程度の資力はある。城の門を固めて、必要とあらば妹を殺してでも、決して外に出したりはしない」